保護者が子供の名前を書いて持たせ、使ったおむつは袋に入れて回収する。宮崎県は、保育所などのそんな運用を変え、定額の負担で使い放題になる「おむつサブスクリプション」に取り組む施設を支援し始める。使った後に施設で処分する費用も補助し、保護者や施設の経済的・精神的負担を軽くして子育てしやすい環境をつくる狙いだ。
美郷町のうなま保育所。取材に訪れた7日、おむつが湿った園児を保育士が座らせ、手早く新しいものにはき替えさせていた。はいていたおむつも替えたおむつも、いずれも使い放題のものだ。「気持ちよくなって良かったね」
町は今月、町社会福祉協議会が運営する町立の3保育所でおむつのサブスクを始めた。トイレのトレーニングを始める2歳の誕生日まで、園児が使うおむつやおしりふきを専門の事業者が届け、定額を支払う仕組み。在庫が少なくなって連絡すると、翌日には補充されるという。
町は2021年度末から、施設で使ったおむつの処分を始めていたが、事業者の提案を受けて今年1~3月にサブスクを試したところ、保護者からも施設からも好意的な反応が寄せられ、本格導入した。
5歳と2歳の男児を預ける母親(43)は、試行期間にサブスクを「体験」した。「仕事から帰って、夜な夜なおむつに名前を書く必要がなくなった。子供とふれあう時間が増え、ゆとりができたと思います」
施設側も助かっているという。施設がおむつを買いに行かねばならないとしたら、店まで距離があることが負担になってしまう。
うなま保育所の友枝雅代所長(54)は「持ち帰ってもらうことも含め、一人一人に合わせて管理するのが大変だった。サブスクはおむつのサイズだけ気にすればいいし、『なくなりそうです』と保護者に伝え忘れる心配がなくなり、ありがたいです」と話す。
保育士の人手不足にもメリット
町は、保育士確保にも好材料になるとみている。専門職のため、町内だけで人材を確保できない場合、近隣にも求人を呼びかけることになる。町の担当者は「近くの市町村から勤務してもらうのに、給与の競争では限界がある。負担軽減がアピールポイントになると期待します」。
県こども政策課によると、おむつサブスクはここ数年で広がり始め、県の調べでは昨年度、県内6市町で20の保育所やこども園などが取り組んだ。
補正予算案に3200万円を計上した「おむつの負担軽減モデル事業」では、希望する市町村を募り、こうしたサブスク利用料の3分の1ずつを上限に県と市町村が補助、保護者の負担は月1千円程度になると想定している。併せて、おむつの処分費も3分の1を上限に施設に補助する。都道府県レベルでのサブスクの支援は全国初という。
対象年齢が高い幼稚園より、保育所や小規模保育事業所などのニーズが高いとみており、25年度には、170施設がサブスクを導入することをめざす。
県こども政策課の担当者は「少子化対策に特効薬はない。こうした事業を積み重ねることで子育て環境の改善につなげたい」と話している。(中島健)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル